「強く・優しく・美しく」これこそがスーパー700、ところでスーパー700って⁉③

こんにちは、ぐるっとキッチン編集部のMr.Kです。 

この秋もぐるっとキッチンはここ燕の情報はもちろん、皆さんの気になるネタをゆる~く配信していきますので、今後の記事に是非ご期待ください! 


 さて2回に渡りお届けしてまいりました老舗カトラリーメーカー㈱サクライさんシリーズも今回でついにファイナル! 

当初2部構成の予定でしたが、私の相変わらずの話の長さで(猛省)、全3部作となってしまいました。

※過去作はこちらでチェック↓↓ 

前回の最後にようやく登場していただいた新社長(遅すぎ)。 

改めましてご紹介いたしましょう。

 ㈱サクライ 代表取締役社長 桜井智恵子さんです! 


  

そして桜井社長の他にもうお一方、営業の岩崎さんにも一緒にお話しを伺います。


左が岩崎さん。

当社の窓口の方で、今回の取材はもちろん工場を案内してくださったのも岩崎さんでした。 


それではインタビュースタートです! 


--ではまずサクライさんの歴史を教えてください。 

社長:まず父が金物卸として始めたのが一番最初で、洋食器メーカーとしては国内専門で始めたんです。 

初めはうちの中では製造していなかったのですが、西燕の工業団地の方に工場を作りましてそこからメーカーということでスタートしました。 

来年で80周年になります。 現会長(前社長)は私の兄になります。

 --お父様が創業されたということは、社長は三代目になるんですか? 

社長:父が亡くなった後は母が社長の時代もありましたので、そういう意味で言うと私は四代目ということになります。  


“スーパー700はなんとあのメーカーとの共同開発だった”


――なるほど、それで来年で80年ですか、すごいですね! ではさっそくですがサクライさんといったらスーパー700、ここをフィーチャーしないわけにはいかないんですが、世の中にはまだご存じない方もいらっしゃると思うのですが…

社長:いっぱいいらっしゃいます。

――商品化のきっかけとはいったい? 

社長:実は時計メーカーのシチズンさんの社内ベンチャーである当時の食空間事業部より、カトラリー製作のお話をいただきました。

それがご縁でいろいろ共同開発をするようになっていきました。

ある日、カトラリーにキズがつきにくい時計のベルトの技術を応用しようというお話がシチズンさんの方からあったんです。 

 --シチズンさんからですか⁉ 

社長:そうなんです、あちらからなんです。

 ――それは何故でしょう。 

岩崎さん:これはあくまでも想像の部分もあるんですが、そのころちょうどシチズンさんが食空間部門を立ち上げて、じゃあ何を作る⁉となったときに、まだ洋食器が一般家庭にあまり普及していなかった時代だったということもあって、だったらカトラリー、となったわけです。


 

--これは貴重な誕生秘話ですね。サクライさんとシチズンさんが繋がっていたことも非常に驚きです。 

ではそのスーパー700の特徴は? 

社長:キズがつきにくくて、変色しない。あとはとても清潔です。最近はマットな仕上げも流行っていますが、やはりどうしてもツルっとしているものの方が食べ物がおいしく感じますよね。

とあるレストランの方が「一度くすんでしまうといくら磨いてもなかなか落ちない」といっていましたが、スーパー700はそれがありません。 

岩崎さん:細かいキズがつくとそこに汚れが付着してとれないからくすんだような見た目になるんだと思います。 

社長:イタリアンレストランの方で「チーズがくっつかなくてとれやすい」っていってましたよ! 

岩崎さん:表面をキレイに磨いてあってツルツルしているからでしょうね。 

――口当たりがいい、という話も聞きます。 

岩崎さん:かなり一生懸命に磨きますから、角が取れて全体的に丸みを帯びた形状になりますから口当たりも滑らかです。 



――それもこれも特殊な処理が施されているからなんですよね、具体的にはどういう処理をしているんですか? 

岩崎さん:まずは通常の商品レベルにまで仕上げます。この後の『表面硬化処理』を施すと色が真っ黒になるんですがこれによって表面硬度が3~3.5倍に向上します。 これを特許技術で洗浄して、特殊研磨します。 


社長:この研磨の現場はお見せすることができないんですよ、秘密の場所です(笑)  

――こんな真っ黒な工程があるんですね。 

社長:はい、でもキズがつきにくくなるのはこの工程があるからなんです。 

岩崎さん:『表面硬化処理』によって硬度を上げる=硬くなることによってキズに強くなります。 

ただ当然この真っ黒い状態では商品にはなりませんから、化学処理をして、表面の凸凹を特殊研磨で極限まで磨いて滑らかさを出す、これらが組み合わさって初めてスーパー700となるわけです。

 ――スーパー700、奥が深いですね。ではこの辺りで話題を変えて、商品を製造するにあたって気を付けていることや工夫されていることはありますか? 

岩崎さん:やはり生産量ですね。工場長と若い人とではどうしても処理力に差が出てしまいます。そこをどんどん上げていって生産効率を上げる。 

それから報連相の徹底です。「ここがちょっと悪いから、次の工程ではここに注意して」みたいな形でなるべくロスのないようなモノづくりを目指しています。 

検品の頻度も増やして不良にはなるべく早い工程で対応してロスは5%以内に抑えます。 コストを下げて生産効率を上げる、それが販売利益にもつながっていきますからね。

--それとここも聞かないわけにはいかないんですが、改めまして新社長ご就任おめでとうございます。 月並みですが新社長としての今のお気持ちをお聞かせください。 

社長:常々言うのは、先のことはもちろん大事です、大事ではあるんですが、目の前の問題を解決せずに先のことばかりを考えていても仕方がないので、まずは一歩一歩皆さんの力をお借りして解決していきましょう、ということですかね。 

--いわゆる職人の世界ともいわれる燕の産業の中で、女性としての目線からやっていきたいことはありますか? 

社長:こんなことを申し上げたら申し訳ないんですが、製造のことはよくわからないんです。 だから今更勉強しなくてもいいっていわれました(笑)。 

だから製造は製造の方に任せています。 

女性目線でいうと、布着せなんかは私が始めたシリーズです。 

かわいらしいシリーズをもっと増やしていきたいです。


 --では岩崎さんにお聞きします。新社長になってまだ一ヶ月ほどですが、会社として変わったと感じることはありますか? 

岩崎さん:ありますね、最近はいろいろとアンケートなんかで皆の意見を聞こうとしてます。改善した方がいいこととか。細かいことでいいからなんでも意見が出るようになってきていると感じます。 風通しが良くなったとまでは言いませんが、今後楽しい会社というか、明るい会社だなというような形に向かっていくんじゃないかなと思っています。(終)  




ということで3作に渡ってお届けいたしましたが、いかがだったでしょうか? 

職人の世界といわれるここ燕市の産業において、数少ない女性社長。しかもことカトラリーメーカーに限っていうとおそらく唯一だと思います。 

スーパー700のキャッチコピーでもある「強く・優しく・美しく」。 

それはまさに桜井社長そのものですね!

女性ならではの感性で、サクライさん、そして燕の産業がどのように変化していくのか? 

今から楽しみでなりません。 

これからのサクライさんに目が離せませんっ!! 

そして皆さんも是非一度スーパー700を使ってみてください。 

味の向こう側を体験できるかもしれません! 


以上Mr.Kでした。 

ぐるっとキッチン

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